『新古今和歌集』を発刊しているすべての出版社様への手紙

某々出版社 編集担当者 御中
                                            
拝啓
 突然,お手紙を差し上げる失礼をお許し下さい。
 私は昨年の1月に拙稿「新宮出身の歌人行遍について」を貴社編集部宛に送付させていただいた者です。
 この論文は,『新古今和歌集』の歌人・行遍が社僧として熊野速玉大社で社務に携わるかたわら,西行法師について歌道を学び,後に藤原定家によってその和歌四首が『新古今和歌集』に撰ばれた人物であることを実証した論文です。行遍の名前は「法橋行遍」で登場しています。
 行遍は12世紀中期に熊野新宮で生まれ,13世紀初期に法眼になった後,間もなく死去した人物で,熊野別当嫡流の行範家の六男に当たる人物です。有名な鳥居禅尼(源行家姉)の実子の一人なので,鎌倉幕府の初代将軍源頼朝の従兄弟の1人でもあります。
 ところが,従来の研究では,なぜか歌人としての実績もない,史上非常に有名な仁和寺大僧正行遍がこの法橋行遍に該当するとされておりました。
 しかし,歌人川田順氏以来の長年の研究の積み重ねによって,それらの俗説にも打ち勝てるだけの研究実績を積み,ようやく確信を持って「『新古今集』の歌人・法橋行遍=熊野新宮出身の歌人・熊野行遍」説を主張するに至りました。それゆえ,昨年の8月に拙稿「新宮出身の歌人行遍について」を一部改稿し,他の論文と共に清文堂出版社から『熊野三山熊野別当』というタイトルで刊行していただきました。
 昨年の1月に拙稿を数社に送付させていただきましたが,学研社を除き,他の出版社からは返事すらいただけませんでした。残念です。でも,これからもあきらめずに,主張し続けていこうと思っています。
 今後ともよろしくお願い致します。                                敬具