新宮市篠尾川渓谷―篠尾巡見②―
昨年の2016年11月05日に田辺ジオパーク研究会主催でおこなわれた 「田辺市本宮町備崎・黒尊仏・(新宮市熊野川町東西)敷屋・篠尾川周辺巡検」に関連して、同年11月06日と11月12日にマイブログで私見を報告しました。
この後、さらにいくつかの報告をする予定だったのですが、私のパソコン操作ミスで、カメラからパソコンへの写真の取り込みに失敗し、そのまま撮ってきたたくさんの写真をカメラの中に放置してしまうことになってしまいました。
しかし、数ケ月後、パソコンと基本ソフトを変えた結果、何とかカメラからパソコンへの写真の取り込みに成功しましたので、おくればせながら私見報告を続けたいと思います。
ご承知のように、和歌山県新宮市熊野川町にある篠尾川(ささびがわ)渓谷は、紀伊半島の土台の1つとされる地層・新生代第三紀の音無川層群(約6000万年前に形成)が分布する地域内にある渓谷の1つです。篠尾川は、奈良県と和歌山県の県境にある大森山(標高1045m)付近に流れを発し、西敷屋付近で熊野川に流れを注いでいます。
午前中、本宮町「備崎」と「黒尊仏」を訪ね(次回は「黒尊仏」について写真と共に話題を提供する予定)、昼食後、新宮市熊野川町東敷屋で中世の敷屋庄(しきやのしょう)と本宮御師に関する私の話を聞いてもらい、本日のお楽しみの一つである篠尾川渓谷巡りに向かいました。
まずは、丸島橋近くで地層の小さな褶曲の跡を見学し、その後直ぐに、発電所に水を送る巨大な送水管を見学。
この送水管は、奈良県十津川村の二津野ダムから富士根山下のトンネルを潜って熊野川左岸の椋呂(むくろ)にある十津川第2発電所まで送られている送水管です。この発電所では、その高低差90mを利用し最大出力5万8000kWの発電をしているそうです。凄いですね(驚)。
ところで、篠尾川渓谷に関するジオ学者たちの公式見解によりますと、ここでは、低角な走向性逆断層(スラスト)がつくった破砕帯や、かつて海溝に形成された海底扇状地の堆積物(フリッシュ・タービダイトと呼ばれるリズミカルな砂岩泥岩互層)を見ることができるとのこと。
なんか難しそうですが(笑)、フリッシュ・タービダイトを写真で示すとこうなります。
これらのタービダイトが見られる場所は車道を降りて少し下った所にある、やや川幅が狭まった場所で、傾斜のある大きい岩の上を滑らないようにしながら苦労して見学しました。
やや、角度を変えて見た川原の上流はこんな感じです。足元がしっかりしておれば下に降りて清流に手を付けてみたいと思いました。
さらに篠尾に向かって車を走らせた後、目印のある所で小道を下りてみると、そこは先程の場所とは違って川原がかなり広くなった場所でした。
形はやや崩れていますが、ここにもタービダイト(砂岩泥岩互層)があります。
そして、これが褶曲したタービダイト(平らな地層が何らかの圧力を受けて波状に曲げられた地層)です。
十分に篠尾川の渓谷美を楽しんだ後、篠尾集落に向かいました。
この篠尾集落がある場所は、今までのタービダイト地域とは違って専ら泥岩層が分布する場所なので、浸食により谷幅が広くなっています。視界も開け奈良県との県境に、標高1000m前後の大森山、大平多山、甲森が一望できます。