「那智権現縁起絵巻」の残欠

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 これは「那智権現縁起絵巻」の残欠と思われるもので,ほぼ真ん中に縮小された那智の大滝が描かれています(1枚目の写真)。

 滝の下の小さな橋の右側に,草葺き屋根の庵が描かれています。その上に「那智籠庵室」の文字がしっかりと書かれています。たぶんここに修験者が籠って,修行に励んだことでしょう。

 滝の手前の左には,代赭色の屋根(たぶん檜皮葺きの屋根でしょう)をもつ建物があり,屋根を貫いて一本の杉の木が立っています。ここには袈裟を着けた1人の僧侶らしい人物が座っています(2枚目の写真)。この絵巻の主人公でしょうか。その上には「瀧拝殿」の文字が書かれています。

 そして,その左上にも,代赭色の入母屋造りの屋根をもつ建物があり,その建物の上には「千手堂」の文字が書かれています(3枚目の写真)。ここには瀧本執行を頂点とする瀧衆がつめていました。

 さらに,目を左側に移しますと,山道を囲むように2本の大杉が立っています。わかりにくいかもしれませんがその2本の大杉の前には,2本の碑伝が建てられています(4枚目の写真)。

 制作年代は,この絵巻残欠の所有者である医師のK氏によりますと,描法的に見て南北朝時代(1336~1392)のもののようです。