海南市の藤白神社所蔵の三尊仏

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 和歌山県海南市の藤白神社は,熊野街道沿いにあります。藤白神社は,熊野五体王子神社の1つに数えられた藤代王子神社の地に建てられています。そのため,古くから「熊野一の鳥居」と呼ばれ,熊野三山の遥拝所とされていました。

 その藤白王子権現本堂には,熊野三所権現本地仏である木造の阿弥陀如来坐像を真ん中にして,右に薬師如来坐像,左に千手観音菩薩坐像が安置されています。
 
 三体とも蓮華座に坐らず,礼盤上に坐っています。これは本地仏御神体として祀っていたためと考えられています(石川知彦氏説)。

 三体とも檜材を一木割矧ぎする方法で造られています。共に,平安時代末期(12世紀後半頃)に制作されたと推定されていますが,千手観音菩薩坐像は頭部以外はすべて後補です。

 衣文の彫りは浅く穏やかに整えられていますが,中央仏師の作品ではなさそうです。

 なお,本堂には,現在,かつての藤代王子権現の本地仏であった十一面観音菩薩立像,不動明王童子像,毘沙門天像も共に祀られています。十一面観音菩薩像の制作年代は,三所権現本地仏と同様,平安時代末期(12世紀後半頃)とされています。

 この写真は,『祈りの道-吉野・熊野・高野の名宝-』(2004)より掲載させていただきました。