三重県四日市市善教寺の阿弥陀如来像

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 この阿弥陀如来立像(1枚目の写真)は,三重県四日市市の善教寺に安置されている阿弥陀如来立像です。

 この仏像は,像内から納入品が発見されたことと,これらの納入品から,この仏像が願主である北伊勢地方の武士(従4位下,筑後守)であった藤原実重の熊野信仰にもとづく造像であったことが明らかになったことにより,よく知られるようになりました。

 この仏像は,像内から発見された藤原実重の作善日記や願文(2枚目の写真)の年号から,鎌倉時代中期の仁治2年(1241)に完成したことがわかります。ほかに延応2年(1240)銘の阿弥陀如来・十一面観音菩薩摺仏(3枚目の写真)も納入されていました。

 なお,この阿弥陀如来立像は,熊野本宮大社本地仏をさしています。藤原実重の作善日記は,貞応3年(1224)に始まり,仁治2年(1241)に終っています。

 仏像完成当時の熊野三山最高管掌者である熊野別当は,27代の湛真(1184~1243,田辺家出身者で有名な湛増の末子)でした。この仏像は,たぶん慶派の一流仏師によって造像されたと推定されています。

 これらの写真は,『祈りの道-吉野・熊野・高野の名宝-』(2004)より掲載させていただきました。