田辺市千福寺の十一面観音菩薩像

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 芳養川流域は,平安時代後期以降,石清水八幡神宮領芳養庄に所属していました。

 田辺市上芳養日向(ひなた)の千福寺は,中芳養の芳養八幡神社別当寺・鷲峯寺(古義真言宗)5院の1つであったと云われていますが,元々日向明神社の別当寺であったようです。
 上芳養の日向,小野,東山,西山の各地区は,石清水八幡神宮領になる以前は高野山領であったようです。

 なお,5院とは神宮寺,蓮光寺,平野の本願寺,日向の千福寺・西福寺の各寺です(『紀伊風土記』)。

 この千福寺に安置されている十一面観音菩薩坐像(元来は聖観音菩薩坐像か)は田辺地方でも稀有な平安時代後期(12世紀前半期)の現存最古の仏像です。
 漆箔の台座は同時期のもの,二重円光の光背は室町時代の補作とされ,一括して,田辺市文化財に指定されています。

 むしゃこうじみのる『地方仏Ⅱ』(法政大学出版局,1997年)を参照しました。