田辺市本宮町・大日越え山道沿いの石仏と板碑

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 田辺市本宮町の熊野本宮大社の南側にある大日山(標高369m)の北側の峠を越えて湯ノ峰に達する大日越えの山道があります。
 『中右記』天仁2年(1109)11月1日条によりますと,藤原宗忠は本宮から湯ノ峰に向かったが,この時に通った道はこの大日越えの山道であったようです。

 しかし,次第に修験者だけが往来するだけの道になり,ただ4月13日の湯登神事(県指定無形文化財)の時だけ宮司以下の神職や氏子たちがこの道を通って湯垢離のため湯ノ峰王子社へ参詣したようです。

 1枚目・2枚目の写真が,その湯登神事の様子をあらわした写真です。

 その大日山へ上る道筋の右手に大正院・正教院とよばれる真言宗醍醐派の山伏の屋敷跡があり,大正院跡の一隅に室町時代前後の胎蔵界五仏種字南無阿弥陀仏六字名号板碑が建てられています。

 なお,大日山頂近くの月見岡神社(月見ケ丘神社,大日社)には,鎌倉時代に制作されたと推定されている大日山石仏(県指定文化財)が安置されています。

 3枚目の写真が,その大日山石仏の写真です。
 この石仏は胎蔵界大日如来像とされていますが,これを阿弥陀如来像と見なす新説も出されています。また,ここにはかつて閼伽井の薬師とよばれた薬師堂もあったようです。

 大日越えの峠を湯ノ峰方面に越えた道端の磨崖に2体の地蔵菩薩坐像が彫り込まれています。別名鼻欠地蔵とよばれ,弘法大師作とか左甚五郎作とかいわれています。また,その直ぐ隣には,上部が欠失した南北朝時代の興国3年(1342)銘の南無阿弥陀仏六字名号板碑があります。

 これらの写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野本宮大社熊野古道』(2007)と熊野中辺路刊行会編『くまの文庫⑫ 熊野中辺路 石の仏たち』(1984)より掲載させていただきました。