田辺市本宮町にある湯ノ峰温泉と東光寺

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

 1枚目の写真。江戸時代の湯ノ峰温泉の絵図です。四村川の支流・湯峰川河畔にある本宮最古の温泉・湯ノ峰温泉には数多くの見所があります。もう既に消えてしまった三重塔などの文化財が目に付きます。現在のそれと比較してください。

 この温泉は,初代の熊野国造であった大阿刀足尼によって発見されたと伝承されています。壺湯は,1m四方の小さな湯壺で,かつてここに斎屋を設けて潔斎をおこなったようです。
 小栗判官が妻照手姫に伴われてここに入浴し,病を癒したという伝説が残されています。泉質はアルカリ重曹硫化水素泉で平均泉温92度と高温です。胃腸病,リューマチ,婦人病などに効果があるとされています。

 川岸の道端に,遊行元祖一遍上人爪書御真蹟と刻んだ碑があり,その直ぐ上に正平20年(1365)に念仏聖仏心が建立した一遍上人爪書南無阿弥陀仏六字名号磨崖碑(県指定史跡)があります。碑高約3m弱。

 2枚目の写真。道端に露出している大岩の上に,初代の熊野国造であった大阿刀足尼の墓と伝える一画があり,そこに何体かの宝篋印塔の部品と思われるものが適度に組合わされて祀られています。これらの宝篋印塔は,隅飾や基礎の格座間の様式から鎌倉時代末期から南北朝時代にかけてのものと推定されています。

 そして,集落のちょうど真ん中あたりに,湯ノ峰王子権現社の別当寺として有名な東光寺があります。
 3枚目の写真。東光寺の本尊は,湯の花の化石でできた薬師如来像で,その胸から湯が湧き出したことから「ユノムネ」とよばれ,これが訛って「ユノミネ」となったといわれています。

 東光寺には多くの仏像が安置されていますが,中でも平安時代後期制作の観音菩薩立像や平安時代後期の毘沙門天立像,平安時代後期の紺紙金銀字菩薩戒羯磨文,鎌倉時代から室町時代にかけての十二神将立像,室町時代不動明王坐像,東光寺本尊薬師如来像の厨子の扉絵である室町時代制作の日光・月光菩薩扉絵(県指定文化財)が有名です。
 4枚目の写真。十二神将立像の中の鎌倉時代の亥像を撮ったものです。

 なお,かつて東光寺の近くにあった湯ノ峰王子権現社は,火事で焼失後,所蔵されていた鎌倉時代から室町時代にかけての多くの鏡と共に皆地にある四村神社に合祀され,さらに現在の場所に移建されたようです。

 これらの写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野本宮大社熊野古道』(2007)と熊野中辺路刊行会編『くまの文庫⑫ 熊野中辺路 石の仏たち』(1984)より掲載させていただきました。