田辺市中辺路町近露にある見松寺蔵の阿弥陀如来坐像

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 この阿弥陀如来坐像は,和歌山県田辺市中辺路町近露にある見松寺本堂の脇壇に安置されている仏像です。かなり傷みが激しいですが,田辺市文化財に指定されています。

 中辺路の中間地点にあたる近露宿には,近露王子社が置かれ,平安時代末期(12世紀末期)にはその近くに熊野権別当湛増が房舎を構え(『吉紀』),先達に引導された上級貴族をはじめとする自らの檀那らを宿泊させていたようです。

 また,近露の真ん中を流れる日置川では,熊野参詣者達の水垢離も行われていたようです。

 本像が制作された時期は,大河内氏によると平安時代末期から鎌倉時代後期にかけての時期(12世紀末期)なので,創造を逞しくすれば,本像は近露王子社の別当寺の仏像であったとも考えられます。もっともこの阿弥陀如来坐像については見松寺の末寺・中曽庵の所蔵仏であったとの伝承もあります。

 仏像の写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野本宮大社熊野古道』(2007)より掲載させていただきました。