補陀洛山寺蔵の千手観音立像

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 山伏や熊野比丘尼たちが諸国の民衆に熊野詣を説いて回る際に使ったとされる「熊野参詣曼荼羅」の右下一帯に,那智勝浦町浜ノ宮にある浜ノ宮王子社(熊野三所大神社)と補陀洛山寺(ほだらくさんじ)が詳しく描かれています。

 浜ノ宮王子社及び補陀洛山寺については以前紹介しましたが,ここが那智山への入口であり,補陀洛渡海へのスタート地点にあたっていました。

 補陀洛山寺は,かつて千手堂とよばれていましたが,そこには平安時代中期(10世紀後半~11世紀前半)の広目天立像・多聞立像(県指定文化財)と,本尊である平安時代後期(11世紀~12世紀)の千手観音菩薩立像(せんじゅかんのんりゅうぞう)などが安置されています。

 本尊である国指定重要文化財の千手観音立像は,熊野那智大社の主神である夫須美大神の本地仏ですが,顔3面と44本の手を持つやや特殊な形態をした千手観音菩薩立像です。像高は,約174㎝あります。

 台座は当時のものですが,光背は戦国時代後期のものです。

 和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野・那智山の歴史と文化』(2006)より掲載させていただきました。この図禄は和歌山県立博物館で購入できます。