英賀神社伝来の梵鐘

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 この梵鐘は兵庫県姫路市の英賀(あが)神社に伝来した梵鐘です。写真は『祈りの道-吉野・熊野・高野-』から掲載させていただきました。

 何故,これを紹介させていただくかと言いますと,ここに記された銘文に,熊野地方の歴史を知る上で色々と役に立つ情報が盛り込まれているからです。

 ①,元亨元年(1321),「別當法印大和尚位定有」が熊野新宮に大雄禅寺を建立したこと。
  『ニ中歴』によると,「定有」は,新宮別当家庶流の行遍家(宮崎氏)の出身であり,37代別当であったことがわ  かる。このことから,『熊野年代記』が主張する「熊野別当家が31代別当正湛で断絶した」という説が誤りであ  ったことが確実となった。

 ②,正中2年(1325),「大工河内□□□□光吉」がこの梵鐘を鋳造したこと。
  「大工」というのは,この場合,鋳物師を意味しており,彼等が他に工房において奉納される鏡や御正体(懸仏)  なども制作していたことが推考される。

 今後の研究の進展が期待されるところですが,研究者にはこれまでの研究史をきちんと踏まえて研究を進めていってもらいたいものです。