藤原喜美子氏の出版記念講演会のこと。

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 12月23日に開かれた御影史学研究会第38回年会に行き,藤原喜美子氏の出版記念講演を聴いて来ました。そのタイトルは「播磨とオニ」でした。
 
 当日,彼女の美声にうっとりとしつつ,約1時間の講演を楽しく聴かせてもらいました。
 
 兵庫県,ことに播磨地域には,古くから「鬼追い・鬼踊り・追儺式」とよばれるオニの行事があるそうで,1月を中心に毎年20数カ所の寺社で,招福除災・五穀豊穣を祈って松明を手にしたオニが大地を踏みしめて力強く踊るそうです。県下には,そのために使われたと思われる古い鬼面がいくつか残されています。
 
 なお,県下の鬼追いの面は,「仏の化身」と伝承されている。性空上人が開基した姫路市書写山円教寺では,赤鬼は毘沙門天の化身(若天),青鬼は不動明王の化身(乙天)といわれ,特別視されているようです。この性空上人に付き従った二人の童子が「若天・乙天」であったと伝えられており,開山堂に祀られた性空上人の側にある護法社には,「若天・乙天」が祀られているそうです。オニが「仏の化身」であるという事例は,姫路市の随願寺や神戸市の近江寺などでも見られます。

 また,円教寺では,1月18日に「修正会・鬼追い会式」があり,オニはまず「白山権現社」で踊った後,次いで「摩尼堂(本堂)」で踊るそうです。オニは「白山権現社」から移動する際,黒い布をかぶり,「摩尼堂」の内陣で踊る時には,扉がすべて閉め切られた暗闇の中で踊るそうです。オニが暗闇にあらわれる事例は,姫路市の随願寺や香寺町の八葉寺でも同様。

 この鬼追いの行事を守り伝えてきた人々は,鬼役とか「鬼係(承仕役・六人衆)」とよばれました。この役は誰でも勤められる役ではなく,特定の家に伝えられてきたようです。たとえば,円教寺の場合は東坂の梅津家に継承されており,このような事例は福崎町の神積寺でもあるという。

 兵庫県の鬼追いにあらわれるオニは,人々を脅かすオニではなく,村の人々に迎えられ,人々から祀られるオニ,というのが彼女の結論です。