根津美術館蔵の落葉色紙

 
  熊野参詣の道すがら後鳥羽上皇が各々の宿所で主催した歌会において参加者が自詠の和歌を書き記した「熊野懐紙」がたくさん伝えられています。
 
  実はこの落葉に因んで詠われた根津美術館蔵の和歌は、形状から見て2首懐紙の後半部分にあたると思われます。藤原定家随行した建仁元年(1201)10月19日に「渓山風・寺落葉」のタイトルで熊野那智社で開かれた歌会において書かれたものである可能性が高いと考えられています。この時の懐紙は他に発見されていませんので、珍しい見っけものですね。
 
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【追記】
  「  寺落葉
   勢きてらや 人もかよはすなりぬれは もみちちりしく にはのをもかな」
  (くまおさんご教示の「さねさしさん」のブログ参照)
 
【追記】もし、この想定が正しければその作者が既に亡くなっている西行ではあり得ず、今のところ作者不明としかいいようがないですね。
 
【追記】『小さな蕾』(創樹社美術出版刊)2011年9月号掲載の担当学芸員・松原茂「古筆切―ともに楽しむために―」より転載させていただきました。
  感謝申し上げます。