渡辺達郎氏から『寿永・元暦の合戦と英雄像』をご恵贈いただきました。

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  上の写真は、去年の水門祭でおこなわれた櫂伝馬競漕を撮った写真です。今年の写真を撮れなかったので、本宮のブログからお借りしました。勇壮でしょう。
  日本中世文学専攻で東京経済大学非常勤講師の渡辺達郎氏から『寿永・元暦の合戦と英雄像』(冬至書房、2011年、3400円+税)をご恵贈いただき、本日読了しました。心から感謝申し上げます。
 
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    渡辺達郎氏は、寿永・元暦の源平合戦の中で活躍した多くの武将達のうち、源義仲平宗盛源義経の3人の人物像を英雄という視角から描き直すため、源義仲についてはその死直前の追討戦に焦点を当てて捉え直し、平宗盛については全体としての否定的評価は動かないものの多くの合戦を通じて多少の復権的考察をおこない、さらに世上においてもっとも英雄視されている源義経については頼朝・範頼との関係、一ノ谷の合戦・屋島の合戦などを通じて改めてその再考を求め、捉え直しを迫っておられます。
  熊野水軍熊野別当湛増の動向についても屋島の合戦との関係から282頁~284頁を中心に考察されています。ありがたいことです。
  ただ残念なことに細やかな注釈がなく、歴史家の川合康氏や上杉和彦氏らのご研究に触れていないことなどにやや不満が残りますが、一度、自己の史観を捉え直すつもりで多くの方にお目通しいただきたいと思います。
 
  目次の大要を示しますと、次のようになります。
  
  はじめに
  第一章 忘れられた源義仲
    第一節 義仲最期の日の再認識
        第二節 義仲最期の紆余曲折
  第二章 平宗盛論―吾妻鏡』所収平宗盛「返状」を基軸として
    第一節  『吾妻鏡平宗盛「返状」再考
   第二節 平宗盛の本質的理解
  第三章 源義経英雄像の原点
    第一節  義経登場戦再考
    第二節 一ノ谷合戦戦略中の義経
    第三節 屋島の合戦前後以降の義経
  付論 『平家物語』紺掻説話の考察―源頼朝本懐成就の言説を巡     あとがき