酒を呑む中国系陶磁器シリーズ №②

 
  旅に1つだけ坏の持参を許されるならば、私はまず5つの坏を選び、気分次第では、この厚手で丈夫な磁州窯系の白釉磁坏を持って行きます。
 
  この焼き物は、思ったよりも安く手に入ったもので、中国系の陶磁器としては珍しく、朝鮮半島の焼き物のように育っていく焼き物です。しかも、その育ち方は美しく、どこまで育っていくか、楽しみな坏です。
 
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  この粘っこい灰色の胎土を持つ白釉磁坏の外側の口縁部には、6㎜から13㎜の白化粧が施され、さらにその上から胴部まで透明釉がかけられています。この坏は、石炭を使用して高温で酸化気味に焼き上げたもので、全体的にやわらかく淡黄白色とでもいうべき色調を帯びています。
  陶器・磁器というよりもその中間に位する炻器(ストーン・ウェアー)に近いものです。 
 
  この灰色の胎土を持つ坏の内側には、その殆どすべての部分に白化粧が施され全体に透明釉がかけられていますが、一部に、白化粧が施されていない部分もありますし、微細な隙間や釉が沸騰して削られたようになった部分もあります。それが普段は何の模様もないところにお酒を入れてしばらく経つと、以下のような不可思議な模様が出現するわけです。
 
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   高台は鋭利な刃物で削り出されています。
  器高は3・9㎝、口径は9・1㎝、高台底径は4・5㎝あります。酒はかなり入るし、模様の変化を楽しむ日常の酒器として愛用するに足る素敵な坏と言えます。
  元代のものでしょう。