葛飾北斎「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」の見方

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 外国人に最もよく知られた日本人である葛飾北斎の作品として最もよく知られている作品に,「冨嶽三十六景・神奈川沖浪裏」即ち通称「浪冨士」があります。

 おどおどしい妖怪の触手のように爪を立ててダイナミックに襲われる船には,房総・伊豆方面から生魚を運び終えた人々が船にはいつくばるように乗っています。
 人々の頭が髑髏のように白点に見えますが,洋画家の中右瑛(なかう・えい)さんによりますと,この絵から,厳しい自然と対峙する人々の生活がかい間見られるそうです。

 冨士山はどこにあるかというと,画面の真ん中よりやや右下に冨士山がでんといすわっています。

 しかし,実はこの絵には,もう1つの冨士山が隠されています。

 どこに隠されているか分かりますか。

 実は,遠景の小さな冨士山のすぐ左側の浪の中に,それが隠されているのがお分かりでしょうか。

 浪に隠された冨士山をよく観察すると,頂上に雪を頂き,右肩に宝永山がある,現実の富士山に最も近い形で富士山が描かれています。
 中右瑛氏によりますと,遠景の富士山は理想像で実はニセモノ,浪中の富士山は現実像でホンモノとして描き分けているそうで,ここに北斎一流のユーモアがあるそうです。

 如何でしょうか,この中右瑛氏の新説(といってももう10年も前に発表されましたが,〈笑〉)・・・・。

 『目の眼』268号(里文出版,1999)所収の中右瑛氏の論文を参照させてもらいました。