新宮市神倉山の神倉神社と火祭

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 県指定史跡の神倉神社は,熊野速玉大社の南西,権現山の南端に位置する神倉山(神蔵山,標高120m)の山頂に鎮座しています。

 1枚目の写真。この神社のご神体は,町中からはっきりと見える「ごとびき岩」と呼ばれる山上の巨岩です。

 50年程前に「ごとびき岩」周辺3ケ所から,神倉山を修行場とした修験者達によって経営された神倉山経塚が発見され, そこから平安時代末期の鏡面毛彫馬頭観音像,亀甲文双雀鏡,湖州八花鏡,常滑刻線文経壺,陶製経筒,青白磁合子,鎌倉時代の金銅製十一面観音像,懸仏,室町時代の一字一石経石などが出土しています。
 さらに注目すべきことは,その下層から滑石製模造品,袈裟襷文銅鐸の破片が出土したことです。この信仰の背後には,原始以来の磐座信仰があったことがわかります。

 神倉神社の祭神は,天照大神・高倉下命です。『日本書紀』に登場する「熊野神邑」の天磐盾が神倉山に比定されるところから,ここに高倉下命が祀られるようになったと思われます。そして,神仏習合にもとづくその後の熊野信仰の繁盛により,神倉山は熊野権現の降臨地とされ,熊野速玉大社の奥の院とよばれるようになりました。

 2枚目の写真。山麓から「ごとびき岩」まで続く自然石を巧みに組み合わせて造った急な石段(538段あり)は,鎌倉幕府の初代将軍頼朝によって寄進されたと伝えられるもので,県史跡に指定されています。

 3枚目・4枚目の写真。例大祭として有名な県指定無形民俗文化財の御燈祭は,毎年2月6日に実施されています。
 この祭は,元来,旧正月6日の修正会に行われた火祭で,白装束を着た男達数百人が燃え盛る松明を片手に石段の途中から急坂を一斉に走り下る非常に勇壮な祭として有名です。

 これらの写真は,『和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野速玉大社の名宝』(2005)より掲載させていただきました。