那智勝浦町下和田にある大泰寺の文化財

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 1枚目の写真。那智勝浦町下和田にある大泰寺(臨済宗)の薬師堂(町指定文化財)は,入母屋造・瓦葺きの建物です。
 建立年代を示す史料はありませんが,建築様式から見て室町時代中期に建立されたと考えられています。どちらかというと,禅宗様式の強い中世の仏堂です。

 このお堂には,本尊である薬師如来坐像(本来は阿弥陀如来坐像,重要文化財)とその脇侍仏が祀られています。阿弥陀如来坐像は,体内に記された銘により,平安時代後期の保元元年(1156)に制作されたことがわかっています。またいつの日か,「仏像」のコーナーで紹介したいと思います。

 薬師堂内陣の宮殿形厨子の上の桟には,3面の懸仏が取り付けられています。

 2枚目の写真。最も大きい懸仏は薬師如来三尊像で,裏面の銘文から室町時代の永享12年(1440)に制作され,生馬庄(現上富田町)の稗田之亀鶴丸(熊野別当家の末裔)によって奉納されたものであることがわかります。

 なお,大泰寺の本堂内陣の厨子内には,かつて「仏像」のコーナーで紹介した南北朝時代の貞和3年(1347)に制作された地蔵菩薩坐像が安置されています。

 3枚目の写真。境内には永和5年(1379)に造営された板碑があります。

 大泰寺は,私達が大切にしなければならない文化財の宝庫といえるでしょう。

 なお,これらの写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野・那智山の歴史と文化-那智大滝と信仰のかたち-』(2006)より掲載させていただきました。