熊野那智大社の男神坐像

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 現在の熊野那智大社には,たくさんの宝物があります。その中で近年,和歌山県博物館学芸員の大河内氏や高木氏などによって発見された,平安時代後期(12世紀)の男神坐像を紹介します。

 この神像は,衣冠束帯の姿で表わされています。もちろん,一木から制作されています。

 この神像は,那智山実報院伝来との伝承があるそうです。熊野三山が成立して以後,那智に関係するようになった氏族によってその住房で祭祀されていた神像のようです。

 那智山実報院の先祖は田辺地方からやって来た人々であったとの伝えが田辺地方にあります。しかし,このことに関して今わかっていることは,鎌倉時代後半(13世紀後期)に那智山で活躍した寂円坊が直接の先祖であったということだけです。

 その後は,寂円坊→証道房→証道房道賢(那智執行)→実報院道珎(那智執行)と続いていきます。

 なお,神像の写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野・那智山の歴史と文化-那智大滝と信仰のかたち-』(2006)より掲載させていただきました。