遍照寺(和歌山県岩出市)の「弘法大師坐像」

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 京都で活躍した鎌倉時代末期(14世紀初期)の円派の仏師として三条法印朝円が有名です。

 しかし,彼等とは別に,この時期に京都を離れた地域で円派仏師の活躍が少なからず知られています。

 1人は鎌倉時代末期(14世紀初期)に,紀州根来寺で尊勝像などを造立したとされる「三修法印」(三条法印の間違いか)覚円です。

 そして,1人は鎌倉時代後期(13世紀末期)に根来寺領内の遍照寺に安置されている「弘法大師坐像」を造立した「熊野三御山大仏師」良円です。
 この「弘法大師坐像」の像高は約68㎝あります。
 この良円は,三条仏師の常円の子息だったようです。

 私はかつてこの「熊野三御山大仏師」良円に関連づけて一文を書いたことがあります。まことに未熟な論文でしたが,それなりの目的は果たしたと思います。
 でも,未だ研究そのものは終っていません。遍照寺と熊野,そして愛知の長隆寺をつなぐ糸は切れたままです。

 なお,この「弘法大師坐像」はアチコチで拝観させていただきましたが,写真は撮らせていただいていませんので,山本勉氏著の『南北朝時代の彫刻』(『日本の美術6』)よりそのお姿を掲載させていただきました。

 まことに穏やかで,奥深い印象を受ける「弘法大師坐像」だと思います。合掌。