有田市浄妙寺の薬師如来坐像,日光・月光菩薩立像

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 今まで熊野地方の仏像に絞って仏像を紹介してきました。

 しかし,これからぼちぼちと熊野地方のものではないが,熊野と関係がありそうな仏像を紹介していきたいと思います。先ず最初に,有田地方にある仏像を紹介します。これは私の大好きな仏像の1つです。

 これらの仏像は,有田市浄妙寺に安置されている薬師三尊像(1つ目の写真が薬師如来坐像,2つ目の写真が日光・月光菩薩立像)です。これらの薬師三尊像は,鎌倉時代中期と推定される本堂内陣にしつらえられた須弥壇上に安置されています。各々,桧財,寄木造,漆仕上げされ,玉眼が嵌め込まれています<以上の写真は,松島健編『紀伊路の仏像』(至文堂)より掲載させていただきました>。

 しかし,残念ながら,これらの仏像を注文した人々が誰であったかは不明です。鎌倉時代紀伊国の有力武士団であった湯浅氏の存在を指摘する人もいますが,私は別の可能性も考えています。

 この浄妙寺は,平安時代後期以後,熊野那智山領宮前庄(宮崎庄)に所在していました。実は,鎌倉時代に,熊野別当家の一族と推定される宮崎氏が有田川右岸下流域に水軍と共に盤居していたようです(『有田市誌』)。この浄妙寺は,有田川左岸下流域にあるので,むしろ湯浅氏との関係の方が強いといわれていますが,宮崎氏との関係も考えてみるべきではないかと思っています。

 確たる証拠は未だありませんが,特に戦国時代にこの地方に一勢力をきづいた宮崎氏の存在を忘れるべきではないでしょう。