最近の熊野研究の中で気になっていること。

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 最近の熊野研究の中で特に気になって仕方がないことが2つあります。
 
 1つ目は,「熊野」といえば「信仰」という風に,「信仰」の面かそれに関連した側面でしか熊野が論じられない風潮が強いということです。
 当然のことながら,人は「信仰」のみで生きているわけではありません。政治や経済・文化などあらゆる面とかかわって生きているわけですから,そういった側面からの研究も必要なのに,現状は宗教に限定された面でしか論じられないことが多いと思われます。
 特に「熊野学」を論じる人の中には,かなりそういった偏りが顕著に見られます。普通の熊野人は,もっと多様に生きているし,生きてきたはずです。そういった側面にももっと光を当てるべきでしょう。特に「熊野学」という名前の論文集を編集される方には,このへんのバランス感覚が必要でしょう。
 
 2つ目は,熊野を見る目です。
 熊野を見る際,とかく奈良や京都,鎌倉,江戸など「政権をになっていた中枢都市」からのみ一方的に見てしまう傾向があると思われます。もっと「熊野」という地域的な視点を大事にし,熊野に住む人々が現実にどのような生活を送り,熊野にやって来た人々に何を伝えようとしたのか,そして熊野にやって来た人々はそこから何を掴みとって帰っていったのか,を論じるべきでしょう。

 ご意見を期待します。