『別冊熊野』二冊の紹介

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 雑誌の別冊で「熊野」を紹介したものが幾冊か出版されています。とりあえず眼に入ったもの二冊を紹介させていただきます。なお,前者には私も原稿を載せていただいています。
 
 ①『熊野-異界への旅-』(『別冊太陽』,構成・山本殖生氏,2002年,平凡社)
  
   杉中浩一郎「熊野 その風土と歴史」
   小山靖憲「熊野三山
   中上紀「花の祭り 火の祭り」
   立花秀浩「熊野信仰」
   山本殖生「山岳修行と熊野修験」
   高木亮英・原章「現代の熊野修験」
   立花秀浩「熊野御幸」
   前千雄「『平家物語』と熊野」
   高橋修熊野水軍の余映」
   阪本敏行「熊野別当
   堀純一郎「熊野の荘園」
   小田誠太郎「熊野権現と浄土信仰」
   安井理夫・原章「小栗判官湯の峰温泉
   根井浄「補陀落渡海」
   山本殖生「『熊野那智参詣曼荼羅』の絵解き」
   松下千恵・原章「熊野の絵本」
   杉中浩一郎「近世の熊野詣」
   北川央「西国巡礼と熊野信仰」 
   後藤伸「森の熊野」
   中嶋市郎「『那智四十八滝』探査プロジェクト」
   三石学「海の熊野」
   宇江敏勝「熊野の森に暮らす」
   江川新治「日本の原郷をたどる旅 熊野古道
   山本殖生「川の古道・熊野川
  
 ②『熊野-その信仰と文学・美術・自然-』(『国文解釈と鑑賞別冊』,編集・林雅彦氏,2006年,至文堂)
  
   林雅彦「『熊野学』研究の今昔」
   豊島修「熊野-古代から近世へ-」
   山崎泰「熊野の歴史(近現代)」
   桑原康宏「空間としての熊野-『山嶮し』についての若干の考察」
   神坂次郎「引き裂かれた一頁-大石誠之助」
   鶴崎裕雄「中世文学に見る熊野詣の諸様相-皇室・貴族そして武士の熊野信仰」
   山崎泰「庶民の熊野信仰(近現代)」
   鈴木昭英「熊野の修験道
   根井浄「補陀落渡海-熊野の観音信仰」
   林雅彦「熊野比丘尼と絵解き」
   和田萊「熊野の歴史(古代)-記紀の世界」
   徳田和夫「名取の老女,和泉式部,御衰殿-女性の参詣説話と流離苦難の物語」
   安原眞琴「熊野をめぐる近世文学-『蛇性の淫』と熊野」
   半田美永「熊野の文学(近・現代)-波及する近代,創造する熊野」
   辻本雄一「中上文学におけるクマノ(KUMANO)の位相」
   石川知彦「熊野信仰の美術」
   梅本信也「熊野の植生と文化」
   太地亮「熊野と鯨-太地鯨方を中心としての概略」
   三石学「熊野と海」
   濵岸宏一「熊野の民俗」
   山本殖生「熊野の祭」
   江川新治・楠本弘児「世界遺産熊野古道を訪ねて」
   西嶋久美子「熊野の食文化誌」
   舩上光次「紹介・佐藤春夫記念館」
   林雅彦「『熊野学』研究文献目録抄」

 これで長い紹介を終えますが,最後に桑原康宏氏の御高論「空間としての熊野-『山嶮し』についての若干の考察」より,大変素晴らしい言葉を引用させていただきます。熊野に関心を寄せる多くの人々の心情を代表する素晴らしい言葉だと思います。
 
 「熊野は『信仰』以外の視点から述べられることはほとんどない。熊野は信仰とその背景という観点から世界遺産に登録され,その背景には強い「宗教」性があることを否定しえない。熊野にとって信仰の存在は大きいが,しかし,それしかないということではない。普通の日本人が住み,そのほとんどは「宗教」を糧にした生活をしていない。そこで,熊野を『信仰』のみでしか語れないという偏った見方では,熊野は見えてこない。信仰というベールを剥がし,住民の日常生活を通したナチュラルな熊野を,複眼的にみないかぎり,いびつな熊野像しか描けなくなる。・・・・」
 
 「世界遺産を通して,熊野が国内はもとより世界から注目されることはいいことであるが,観光開発に走りすぎて,せっかく残り,世界の宝となった「熊野の本当の良さ」を一挙に破壊しないような監視体制が必要となる。宝を守り続けるための指針を出来るだけ早く策定し,熊野内外の人たちが一丸となり,保護保全へ向けた継続的な取り組みを期待したい」