地域の中世文書の行方。

 近年,紀南地方で中世文書の翻刻・解読が進み,中世の地域の歴史がかなり明らかにされつつあります。ただ,心配なこともあります。それは中世文書の原本の行方がわからないものがかなりたくさんあることと,たとえその行方がわかっていてもこのまま放おっておいたら,散逸してしまう文書も出てきていることです。

 特に個人で所有されているものの中にそれが顕著です。中には最近翻刻されたばかりで,遺族の間でバラバラに分割されて所有されている有名な中世文書もあります。
  
 できれば,地元の自治体で保管して欲しいのですが,それがいったん国や県施設へ行ってしまえば地元で利用するのが非条に難しくなります。やはり,地元の自治体で施設を作って史料をきちんと保管しつつ,研究者の利用の便を図っていく必要があるでしょうね。

 そのためには,郡市町村の枠をこえ,当該地域の文化財審議委員や担当者,さらには地域史の専門家の協力を仰いでいく必要があります。