小菅信子『戦後和解』

小菅信子『戦後和解』(中公新書,2005)という本は素晴らしい本ですね。
この本は,第2次世界大戦中にビルママレー半島シンガポールなどで戦った日英両国が如何にして和解したかを調査・執筆した凄い本です。
日英両国間には,戦争中の日本軍によるイギリス人捕虜虐待問題がありました。とてもすぐには和解できるような関係ではありませんでした。
それが何故和解できたか。

そこには,両国関係者達の人間としての長い努力の跡があったのです。
 ①,1981年・・戦争中にイギリス軍と戦ったロンドン勤務の日本人商社員がイギリス人の元捕虜と対面  し,その体験談を語り合い,相互交流を通じて合同慰霊祭にまでつなげていったこと。
 ②,1997年・・当時の林貞行大使を始めとする在英日本大使館員達が中心となって,天皇誕生日祝賀会  にイギリスの元捕虜や元民間人抑留者を招き,同収容所にいた仲間どうしの再会の橋渡しをしたこ   と。
 ③,翌年・・最近死去された当時の橋本首相がイギリスを訪問し,ブレア首相と会談。イギリス国民に  対して謝罪を行ったことで,天皇のイギリス訪問が実現し,それが成功したこと。

しかし,これはイギリスと日本との話です。これが,アジアと日本との関係,とくに中国や朝鮮半島の国々との関係となるとこう上手くはいっていません。何故上手くいかないのでしょうか。
深く考えてしまいました。