城川 隆生『丹沢の行者道を歩く』と城川 隆生編『中世の丹沢山地史料集』を推薦します。

私の下手な推薦文よりも,サイトに載せた本人の素晴らしい挨拶文を引用しておきます。

「このサイトは神奈川県丹沢山地にまつわる中世期の史料(歴史資料)を紹介しています。作成者は、山岳宗教者の活動がもっとも顕著だった「中世」の大自然にどのような宗教空間か描かれていたのか?というテーマで、主に丹沢をフィールドに研究してまいりました。その一端は第26回日本山岳修験学会で発表するとともに『丹沢の行者道を歩く』という歴史散歩の本としても出版いたしました。
 研究を進める中で、史料やそのテキストデータが公開されていたらどんなに効率が良いだろうと思うことがしばしばありました。そんな折、ある学会で、『熊野三山熊野別当』の著者であるS氏から歴史学者の細川重男さんを紹介され、「日本中世史アーカイブズ」のお話を伺いました。私の立ち位置は歴史学というよりも宗教学に近いのですが、これは素晴らしい、自分の作成した史料データも公開しなくてはと思ったわけです。至らない内容でしかも余計なコメント付きの史料集ですが、今後、丹沢の歴史を調べたり研究したりする方々に必要に応じて活用して頂ければ幸いです。
 しかし、丹沢山地にまつわる「中世」の同時代史料は決して多くありません。しかも、「大山参り」や尊仏山(塔ノ岳)登拝など主に江戸時代以降に流行した民衆の登拝習俗の圧倒的な記憶と、明治以降の神仏分離と産業化・観光化の影にかくれて、「中世の丹沢」は霞のかなたにあります。
 おまけに、山岳宗教の歴史については、学校でもほとんど教えていない上に、かつては研究もあまり進んでいませんでした。歴史の本にしても、山の本にしても、誤解にもとづく記述があたりまえなのが現状です。
 救いは、古代・中世仏教の研究や山岳宗教の研究がこの20年ほどで大きく進展してきたことです。次第に明らかになってきた新しい「中世の山々」の姿を視野に入れながら丹沢の歴史を眺めれば、少ない史料の中からもまだまだ何かが見えてくるような気がします。
 もし皆様もお気づきの史料や遺物等がございましたら、ぜひ教えて頂きたいと思います。よろしくお願いします。正直なところ、私はこの先研究活動に専念できるような環境にありませんが、滅多には見つからない中世の丹沢関連史料、何かわかれば即更新いたします。
 2006年5月  城川 隆生                                 」