『西行伝説の説話・伝承学的研究(第三次)』御恵贈感謝!!

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 過日,上智大学の西澤美仁教授から科研研究の成果報告書である『西行伝説の説話・伝承学的研究(第三次)』をご恵贈いただきました。

 紀北出身の西行についてはかねてより大きな興味を抱いてきましたし,これからもささやかな研究を続けていこうと考えておりますが,特にその中に和歌山大学図書館所蔵紀州藩文庫蔵本を定本とした校本『紀路歌枕抄』が収載されていたことに喜びを感じました。

 全部で887歌が収められていますが,いずれも紀州の地誌を語る上で重要な歌ばかりです。

 紀南地方に限定しますと,日高郡では,三穂窟,塩屋(王子),上野,切目山(王子),磐代(王子),千里浜,三名部浦(鹿島)が,牟婁郡では,磯間浦,神島,風莫浜,白良浜和深山,秋津野(磐蔵山・人国山),雲森,八王子(三栖山),岩田川,石不利山,高原,三越(岩神),発心門,熊野,本宮,新宮,那智,音無川(里・滝),七越峯,真熊野(雲取・志古山・小口河原),美毛登,新宮,神倉山,御船島,水伝磯,有馬村(花窟),盾崎,佐野(岡・山),秋津浦,三輪崎,鳴那浜,哭沢森(渚森),那智(三重滝),鳴滝,玉浦(離小島),塩崎浦などにちなむ歌が載せられています。

 そのうち,西行の歌を選んで載せてみますと,次のようになります。

 ○岩代の松風聞ばもの思ふ人もこゝろはむすぼふれけん(山家集)
 
 ○浪よする白良の浜のからす貝拾ひやすくもおもほゆる哉(山家集)
 ○はなれたる白良の浜の沖の石をくだかであらふ月の白波(山家集)
 ○待きつるやがみの桜咲にけりあらくおろすな三栖の山風(山家集)
 ○松がねの岩田の岸の夕涼み君があれなとおもほゆるかな(玉葉雑一)
 
 ○三熊野の空き事はあらじかしむしたれいたのはこぶあゆみは
 ○あらたなる熊野まふでのしるしをば氷のこりにうべき成りけり
 ○立のぼる月のあたりに雲晴て光かさなる七越の峰(山家集)
 ○雲鳥や志古の山路はさておきつ小口河原の淋しからぬか(山家集)
 ○かすみ敷熊野河原を見渡せば波の音さへゆるくなりけり(山家集)
 ○木の下に住けん跡を見つる哉なちの高根のはなを尋ねて(山家集)
 ○身に積る言葉のつみもあらはれてこゝろすみぬる三かさねの滝(山家集)
 ○雲消る那智の高根に月闌て光をぬける滝のしら糸(山家集)
 ○三くまのゝ浜ゆふ生る浦さびて人なみなみに年ぞかさぬる(山家集)
 ○小鯛引あみのうけ縄よりくめりうきしわざ有塩崎の浦(山家集)

 地誌も面白そうですが,地名比定が大変ですね。