稲羽根王子社の祭神

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 現在,和歌山県西牟婁郡上富田町岩田にある岩田神社に,平安時代から江戸時代にかけての多数の神像が合祀されています。

 そのうち,この女神像他何体かの女神像は近くの上岩田にある五体王子の1つである稲羽根王子社の祭神(若宮か)と見なしても良いでしょう。この女神像(本地仏は十一面観音像)の制作時期は,11世紀後半までさかのぼるとされています。

 貴族・藤原宗忠の日記『中右記』天仁2年(1109)10月22日・11月3日条に,「氏院庄櫟原石田上座清円房」(この荘園の「庄司」)が登場してきますが,あるいは彼が何等かの形でこのことと関係していたのかもしれません。

 なお,ここは,12世紀前半以後,熊野別当家の庶流・長兼家(石田家)の拠点として経営された場所でもあります。背後の山は神体山ですが,不遜なことに裏半分が切り崩され,醜い姿を晒しています。
 経塚などの存在も考えられるわけですが,いつ見ても怒りが湧いてきます。

 神像の写真は,和歌山県立博物館編『世界遺産登録記念特別展 熊野本宮大社熊野古道』(2007)より掲載させていただきました。まだ在庫がありますので,どうかお買い求めください。