中路啓太『火ノ児の剣』を読了。

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 中路啓太『火ノ児の剣』(講談社刊)を読み終わりました。
 
 いやあ,面白かった。あの「正徳の治」を行った政治家・儒学者として名高い新井白石が、実は剣客であったという,嘘か本当かわからない設定自体が奇抜かつ興味をひかれる。

 世の中が,大老堀田正俊刺殺事件で揺れる中,堀田家元家臣・新井伝蔵(白石)は,浪人時代に5代将軍・徳川綱吉側用人牧野成貞と甲府徳川家用人鈴木四郎左衛門から仕官を求められ,話は複雑に展開して行く。そこには,綱吉の出生の秘密に絡む陰謀が廻らされていた・・・・。白石は養うべき家族を抱えて,急変する事態の中をどう潜り抜けて行くのか・・・・。

 この小説の中で,たくさんの人々が陰謀の犠牲となって死んでいったが,非常に個性溢れるたくさんの人物が登場し,エンターメント作品としても一級品である。
 さすが,小説現代長編新人賞奨励賞を受賞するだけの力量を持った新進作家の作品だと思う。

 今後が楽しみな作家である。