心歌少々

200×年4月
シャクナゲの花を分けつつ歩く道 いつか途絶えることもあるかと
花一輪差したる壷の悲しさよ いよいよ深きわが思いかな

200×年8月
暑き夏 愛しき女の面影を胸に抱きつ 辺地の道行く
夏あかり ほのかに見ゆる印塔に さめるが如く仏あらわる
熊野道 風吹くままに辿り行く 黄昏近き幽冥のころ
蛍舞う暗き河原のせせらぎに 心静かに 眠りつきたし
夏来たり 何を背負いて奥駆ける 先行く人の影を追いつつ

9月
時行けど 再び帰る道もなし 嘆きの川の長き谷間よ
秋風とともに心の崩れ行く いつかは戻ることもあるかと
この道をともに辿りし女もなし ただ一人にてとぼとぼと行く
崩れ行く地球に生まれし 悲しさよ 未来を持てぬ子等の哀れさ
陽炎の立ち上りたる 日中に 狂いもせずにわが心あり
古きこと追いかけつつも 新しき 物に思いの限りなくあり
限りある命の炎燃やしつつ 岩這い登る奥駆けの道
道近く沢転がりて滝流る 還らぬ時を今をこそ思え
死出の旅 辿るは やすし 思い残れることしなければ
久方に会いたる友の病み姿 我も同じと思う悲しさ